あらすじ3 神々の代理人形編

 ルクシアナ大陸では、かつて竜と人とが共存していた。けれど、それもおよそ千年ほど前までの話。
 人間の統一国家を目指したドルシエワルド国により大陸中が戦火に覆われ、竜もまた、大きな戦力として目を付けられた。大半の竜は身を隠し、逃げそびれた一部がドルシエワルド国に隷属させられ、その身を改造されていった。竜たちの嘆きは深く、それは龍神たるリュージュに届くほど。ドルシエワルド国にトラウマを刺激されたリュージュは、大陸から竜を逃す門を設置するなど、珍しくも大きな介入を行った。それを見たフェイも魔法を対抗国に教えるなど悪ノリし、結果ドルシエワルド国は敗れることとなった。その後、改造された竜が完全に元の姿に戻れるまでの千年間、ドルシエワルド国を見張ることをリュージュと約束した軍師の一族に、勝利国の盟主、エルフィーリドエ国はアドリゲルという姓と貴族籍を与えた。そして、それから990年近く。
 軍閥貴族、アドリゲル家は途絶えた。最後の当主の名はアシュレイ。如何にも古くからの貴族らしい彼の本当の人格がラズルーンと呼ばれる気弱で優しい女性人格であることを知る者は少なく、その身体に性別を示す特徴がないことを知る者は更に少ない。血を絶やさぬために繰り返された近親婚はアドリゲル家を歪め、子孫を残せぬ子に絶望した両親は狂った挙げ句の果てに子を殺すべく賊を手引きした。賊は屋敷を蹂躙し、火を放った。ラズルーンは命からがら、一人逃げ延びたものの、エルフィーリドエ国からほんの少し離れた辺境で、山賊に命を奪われた。
 約束の不履行を察知して様子を見に来たリュージュは、自らの力の欠片を宿した羽根を核に、ラズルーンの蘇生を試みる。フェイはリュージュの組んだ術式を読み切らず、ほんの僅かな力しか宿さぬ羽根を心配して、リュージュの壱の羽、最も力ある羽と交換してしまった。結果として、ラズルーンの魂にはリュージュの羽が食い込み、人間ではなくなってしまう。半神の魂は人間の身体には収められず、フェイは償いとして、己の力を宿した風切羽を魂を入れる身体の材料として提供。ますます人外化に拍車がかかる。
 蘇生されたラズルーンは自分に起きた変化を受け入れられず、記憶に蓋をし、旅の道連れに増えた人外たちに怯えつつ、ドルシエワルド国を目指す。元々生活力のないラズルーンは行き倒れまくりながらも、眠る改造竜たちの封印を解くべく、旅を続けるのだが、そんなラズルーンの目的を知らず、千年前に竜と恋仲であった魔女が生命力を生贄に捧げることで竜の門を再度開放しようと暗躍。改造竜にまで手を出したことで、ラズルーンの逆鱗に触れる。リュージュとフェイは暴走するラズルーンを止めようとするが、逆にラズルーンに力を奪われる。ラズルーンの固有能力は果てのない魂の器であり、神二柱分の力を収めても、器が対応して広がるだけであった。最終的にラズルーンの怒りをおさめたのは、魔女に殺されかけていた、かつて彼女と恋仲であった改造竜。魔女はまさか恋竜が自分を気にかけて残り、捕まって改造されていたとは思ってもいなかった。事件後、ラズルーンはリュージュとフェイに力を返したが一度広がった魂の器は戻らず、寿命のない三人は今もどこかで旅を続けているという。