『かくて耀夜は白華を構う』甘えなくとも甘やかす

 白華と少女を名付けたは良いものの、彼女は耀夜や周囲の与えようとするものをことごとく断ろうとしたため、結局耀夜に気の休まるときはなかった。
 まず翌朝、新たな服への着替えを断ろうとした。勿論、それだと着せ替える側として面白くない、もとい不潔であるため白華の意見は却下され、その日のうちに何人かの見立てで客間のクローゼットに更に洋服が追加された。どんどん運ばれてくる洋服を見て、白華の表情は引きつっていた。
 その次に、朝食を断ろうとした。朝食だけならともかく、食事全般を拒否しそうな勢いだったため、耀夜が猛烈に説教し、見張り、結果として白華は半泣きになりながら食事を摂った。ただし、それこそ、小鳥の啄む程度に。
 白華からすれば、食事の形態が人間とは異なるというか、光発電できれば普段なら十分に動けるところを食事の分解に余計なエネルギーを割かれることになる。傷ついた身体のことも相まって、食事は是非とも遠慮したいところだったのだが、正体を隠している現状では反論ままならず。
 食後、食事の分解に要するエネルギーを確保するために窓際で半休眠状態になっている様子は、何かの絵画のように美しくはあったが、あまりにも長時間、ピクリともしないために度々誰かが生死確認に訪れる羽目になった。
 医師の診察を受けるよう促しても、白華は怯え、拒絶する。
 一言目には「すみません、結構です」、二言目には「構わないでいただけませんか」、三言目には「もう帰りたいんです」、そろそろ言われる言葉に予想が付きながらも耀夜が客間を訪れると、白華は変わらず窓際で飾られた人形のようにじっと座っていた。
「白華」
 声を掛けると、びくっと肩を震わせ、恐る恐るといった様子で耀夜を見上げる。手負いの獣を彷彿とさせる様子に苦笑しつつも、耀夜は白華に携帯通信端末を差し出した。
「暇潰し用に、一個契約してきた。家に連絡するなら、しても良いぞ」
 白華はまじまじと耀夜の手の中の端末を見つめている。白華が直ぐに拒絶しないのは、初めてのことかもしれなかった。
「ですが、そんな」
 はっと我に返ったように断りの言葉を口にしようとする白華の手に、耀夜は端末を無理矢理握らせた。数秒の悶着の末、白華は端末を手に取る。
「ありがとう、ございます」
 ようやく聞けたお礼の言葉に、耀夜は破顔した。恐らく、外との通信手段を渡すことで何かしらの騒動はあるだろうと警備会社の社長として予想している耀夜だが、それでも現状を打開できそうな白華の態度は喜ばしかった。