『うたへうたえ』感想

 ノベプラなどにて連載されているほか、BOOTHでも購入することのできる、うらひとさんの創作百合小説、『うたへうたえ』について。

『言の葉を重ね合っては書き留めたいつしか詞は恋文になる』
短歌を詠む少女が、バンドでラブソングを書く話。
創作百合×バンド×短歌の小説です。

(小説概要より)

 年齢制限はありませんが、創作百合を扱っておられます。今回は、夜見ベルノさんの朗読実況をきっかけに書籍版の購入を決めました。

 舞台は現代で、女学生たちが主人公です。現代ならではの「あるある」なシチュエーションにほっこりと温まったり飯テロされたり、描かれる情景そのものはとても穏やかで温かいのに、スパイスを加えるかの如く恋愛感情が絡まってきます。結果として、とても甘酸っぱい読後感。

 そのうちにこちらも感想を書く予定の『喫茶店フォレスタ』とも共通しているのですが、登場人物たちが優しく、明るく、健気で、まさに光の創作。バンドと短歌って、一見音楽系(という名の体育会系)と文化系で、所属しているメンバーのイメージに差があるような印象だったのですが、それはステレオタイプなものの見方であり、両者は共に韻を踏んだ言葉でリズムに乗りながら想いを伝える芸術であるという共通点があります。その事実にハッとする頃には、きっとこの物語が深く刺さっていることでしょう。

 作中の短歌は情景や心情をとても生々しく伝えてきます。一言で言うと、エモいです。

 書籍版を手に取ったわけですが、表紙の夕焼け空のような色合いが素敵で、タイトルの周りにひっそりと並ぶ文字列に伏線を感じ、おしゃれなフォントに女子学生らしさを思い、すっきりとした行間やルビにうらひとさんの思いやりを感じるなど、ネット版とはまた違う感動がありました。

 現代創作百合が好きで、人の優しさに触れたい方には是非ともオススメしたい作品です。