胎内に……感じてはいけない所に感じる、桜香の熱。ふるりと背筋が震えたのは、変化の予兆だったのか。
熱い。いや、寒い。体の奥から熱が上がってきて、なのにそれが足りなくて、矛盾した感覚に、更に混乱する。
熱いのはどこだ。桜香が中出しをした、腹の中だけだ。それ以外の身体中が寒くて、もっと熱いのが欲しい。
ああ、欲しい。欲しい。欲しい。足りない。
……何が?
ポロポロと、更に溢れていく涙。訳も分からず泣く俺に、桜香がトドメとばかり、腰を突き入れた。その動きで掻き混ぜられる、体内の熱。
足りない、足りない、欲しい、もっと、これが、欲しい‼︎
必死でキュウキュウと内壁を締め上げながら、腰を振りたくっていた。桜香に何か言われた気もするけれど、聞こえちゃいなかった。もう一度中出しを受けて、やはり足りていなかったのがこれだと確信できてしまった……。同時に、更に奥に必要だと感じたのが、もうダメだった。
グポッ! と、胎の最奥を許した衝撃で、やっと理性が飛び起きた。ニヤニヤと、桜香が笑っている。
「イイ子だね、錦」
「……ぁ」
目の前にチカチカと星が舞っている。
「ちゃーんと奥まで開いてくれて、ホント、イイ子だ。ほら、僕がここまで入れたの、わかる?」
クックッと腰を使いながら、桜香は俺の頸を舐める。彼が腰を動かす度に、先端が奥の入り口を開閉する感覚に背筋が粟立った。
「ここに出しちゃったら、一発で孕んじゃうかもね?」
嫌だと訴える気力も、体力も、尽きていた。震えるばかりの俺に、それでも上からのしかかって、桜香が牙を添えた場所は、初夜と同じ頸だった。
ブワリと立ち上る、甘い香りに逆らえない。そう、ずっと、猫だと思い込んでいた桜香を拾ったときから、逆らえなかった。この香りが俺を狂わせる。この香りになら、犯されても良いと、むしろメチャクチャにして欲しいと……
頸を噛まれ、初夜のような体勢で、初夜とは違って種付けされて、俺の中で何かが切り替わるのを、朧げに感じた。
「錦ってば、意外と食いしん坊だったなぁ。ここまで貪らないと、自覚してくれないなんて」
桜香が……桜香の香りが、一段と強く、俺を発情させる。俺の中が、桜香の慈悲を期待して、ジワリと濡れていた。男が濡れるなんてこと、ある筈がないのに。
「早速だけど、とっとと正式に番わせてもらうよ。錦は僕のモノだからね」
じゃあ今までのは何だったんだ⁉︎ と突っ込む余裕はとっくになかった。けれども心が納得いかなくて、涙だけがハラハラと落ちていった。
その理由については、もう悶絶レベルで恥ずかしいし、情けないものだったけれど。体だけを先に堕とされて、心がついていけなくて寂しいとか、言える訳もなく。
桜香に揺さぶられるままに、発情した声で鳴いて、泣いて、その熱を受け止めて。引き抜かれる痛みに、また泣いて。頸を噛まれる頃には、涙も枯れて。
ああ、生殖能力のある雄猫は、そうだったなと、頭の片隅で、どうでもいいことを考えていた。棘があって、その痛みで雌の排卵を誘発するんだった……よな。
もういっそ、心と体と頭を全部バラバラにしてしまって、何も考えたくなかった。そして実際に俺は、ここで一回、心を閉ざした。理性の方も、早々に仕事を放棄して、残ったのはただ発情した体だけだった。桜香なんて、それを勝手に抱いていれば良い。
俺としては、そこで俺の話は終わると思っていたんだ。
……そうは問屋が卸さなかった、訳だけど。
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