11 発情猫は、狂い鳴く

 胎内たいないに……感じてはいけない所に感じる、桜香おうこうの熱。ふるりと背筋がふるえたのは、変化の予兆だったのか。
 熱い。いや、寒い。体の奥から熱が上がってきて、なのにそれが足りなくて、矛盾した感覚に、更に混乱する。
 熱いのはどこだ。桜香おうこうが中出しをした、腹の中だけだ。それ以外の身体中が寒くて、もっと熱いのが欲しい。
 ああ、欲しい。欲しい。欲しい。足りない。
 ……何が?
 ポロポロと、更にこぼれていく涙。訳も分からず泣く俺に、桜香おうこうがトドメとばかり、腰を突き入れた。その動きでき混ぜられる、体内の熱。
 足りない、足りない、欲しい、もっと、これが、欲しい‼︎
 必死でキュウキュウと内壁をめ上げながら、腰を振りたくっていた。桜香おうこうに何か言われた気もするけれど、聞こえちゃいなかった。もう一度中出しを受けて、やはり足りていなかったのがこれだと確信できてしまった……。同時に、更に奥に必要だと感じたのが、もうダメだった。
 グポッ! と、はらの最奥を許した衝撃で、やっと理性が飛び起きた。ニヤニヤと、桜香おうこうが笑っている。
「イイ子だね、にしき
「……ぁ」
 目の前にチカチカと星が舞っている。
「ちゃーんと奥まで開いてくれて、ホント、イイ子だ。ほら、僕がここまで入れたの、わかる?」
 クックッと腰を使いながら、桜香おうこうは俺のうなじめる。彼が腰を動かす度に、先端が奥の入り口を開閉する感覚に背筋が粟立あわだった。
「ここに出しちゃったら、一発ではらんじゃうかもね?」
 嫌だとうったえる気力も、体力も、きていた。ふるえるばかりの俺に、それでも上からのしかかって、桜香おうこうが牙を添えた場所は、初夜と同じうなじだった。
 ブワリと立ち上る、甘い香りに逆らえない。そう、ずっと、猫だと思い込んでいた桜香おうこうを拾ったときから、逆らえなかった。この香りが俺を狂わせる。この香りになら、犯されても良いと、むしろメチャクチャにして欲しいと……
 うなじまれ、初夜のような体勢で、初夜とは違って種付けされて、俺の中で何かが切り替わるのを、おぼろげに感じた。
にしきってば、意外と食いしん坊だったなぁ。ここまでむさぼらないと、自覚してくれないなんて」
 桜香おうこうが……桜香おうこうの香りが、一段と強く、俺を発情させる。俺の中が、桜香おうこうの慈悲を期待して、ジワリとれていた。男がれるなんてこと、あるはずがないのに。
「早速だけど、とっとと正式につがわせてもらうよ。にしきは僕のモノだからね」
 じゃあ今までのは何だったんだ⁉︎ と突っ込む余裕よゆうはとっくになかった。けれども心が納得いかなくて、涙だけがハラハラと落ちていった。
 その理由については、もう悶絶もんぜつレベルでずかしいし、情けないものだったけれど。体だけを先にとされて、心がついていけなくて寂しいとか、言える訳もなく。
 桜香おうこうに揺さぶられるままに、発情した声で鳴いて、泣いて、その熱を受け止めて。引き抜かれる痛みに、また泣いて。うなじまれる頃には、涙もれて。
 ああ、生殖能力のある雄猫おすねこは、そうだったなと、頭の片隅かたすみで、どうでもいいことを考えていた。とげがあって、その痛みでめすの排卵を誘発するんだった……よな。
 もういっそ、心と体と頭を全部バラバラにしてしまって、何も考えたくなかった。そして実際に俺は、ここで一回、心を閉ざした。理性の方も、早々に仕事を放棄ほうきして、残ったのはただ発情した体だけだった。桜香おうこうなんて、それを勝手に抱いていれば良い。
 俺としては、そこで俺の話は終わると思っていたんだ。
 ……そうは問屋がおろさなかった、訳だけど。

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