10 二度目、上書き

 痛いだけなら良かった。それだけなら良かったんだ。俺は悲劇ひげきの主人公なんだと、自己陶酔とうすいも現実逃避とうひもできた。耐えれば終わると、信じることだってできた。なのに尻の中には快感を拾うポイントなんてのがあるから、その身をもって学習済みの桜香おうこうは全力でそこを探すし、俺は男としての最後の矜持きょうじまでうばわれようとしている。
「やめ、も、いや、やだぁ」
 譫言うわごとのように否定の言葉をこぼしても、桜香おうこうは止まってくれない。そして、それだけしつこく探されれば、いくら腰を逃がそうと振っていても、否応なく恐れていたその瞬間がやってくる。
「あ」
 ぴくりと体が反応したのを、見逃してくれるはずもなかった。しこりのような場所に触れられる度に、変な声が、後から後から、押し出されてしまう。
「あっ、ああっ、あ、んぁあ、ふ、あ」
 出来の悪い楽器のようにあえぐ俺の後孔を心底楽しそうにめ回し、チュパっと音を立てて口を離した後も、息つく間すら与えてくれずに指をねじ込んでくる桜香おうこう。一度見つかった弱点はまた直ぐになぶられて、戦慄わななく背筋をザラザラの舌がい上がる。
「体中、桜色で可愛かわいいね? にしき
「や、あん、そこ、」
「気持ちイイね、ちゃんと覚えておくんだよ」
 違うと首を振っても、体は気持ちを裏切って、正直に快楽を享受きょうじゅしていた。やがて揺れる腰は逃げる為ではなく、くわえ込んだ指を自らイイ所に迎え入れるように動きを変えていた。
 桜香おうこうが、笑ってそれを指摘する。
「こんなに健気に吸い付いてきちゃって、にしきは、上の口よりも下の口の方がよっぽど正直だ」
 否定したかった声は、グチュリと突き入れられた三本もの桜香おうこうの右手の指と、うなじに突き立てられた牙、乳首を引っ張る左手の動きの前では全くの無力だった。気付けば、桜香おうこうに、もう抱いてくれと懇願こんがんしている始末。
「い、れろよ、おぅ、こう! んっ、これ、以上っ、されたら、もう、俺、ああっ、オカシクな、あっ、あ」
「これっぽっちでオカシクなるだなんて、不思議なことを言うなぁ」
 この上なく上機嫌にのどを鳴らし、桜香おうこうは俺の中から指を引き抜いた。初夜に一度、つらぬかれただけで、それ以降は使われることのなかったそこ。一夜で散々に慣らされ、ポッカリと開いたまま失われた質量を待ち望んでいるのに耐えられず、ギュッと力を込めても直ぐにまたクパリと開いてしまう。ハクハクと、これでは雄をむのを自ら誘っているようだと、思い至った時には遅かった。
 ピタリと当てられる熱い感触。記憶に残っているよりも一段と質量を感じるそれに、俺の尻穴はよろこんで吸い付いた。
「頑張ってね、にしき
「あああああぁぁぁっ‼︎」
「ふふっ、そろそろ精液ミルクも薄くなってきたね。メスイキももうすぐかな?」
 二度目の挿入の瞬間は、痛みよりも背筋を走り抜けた快楽が脳を焼いて、なす術もなく背はり、のどが高い悲鳴をほとばしらせた。桜香おうこう揶揄からかった言葉が正しいのなら、れられただけでトコロテンまでキメてしまったことになる。
 泣きれてぼやける視界で恐々こわごわと視線を下腹部にやると、果たして俺の愚息は薄く少量の精を吐き出しており、その事実が俺をひどく打ちのめした。れられただけで、イッてしまった。もう、俺は十分にオカシクなっていたのだ。
 体内に感じる、桜香おうこうの圧倒的な大きさ。俺が愕然がくぜんとして落ち着かない間に、肉棒がゴリゴリと遠慮なく、俺の前立腺をえぐり始める。
「ひっ、ひぃっ、んん、あっ、あ、あ、あ、」
 そして、ついに桜香おうこうが、俺の中で初めての射精をした。

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