08 因果応報、自縄自縛

 桜香おうこうに逆らえないままただれ切った日々を過ごし、およそ半月。最初の夜こそ人間に化けていた桜香おうこうだったけれど、日に日に猫らしさを増して、最近はただの二足歩行の巨大猫に戻っていた。それでも俺は桜香おうこうたねを差し出していた……差し出せていた。
 桜香おうこうの甘い香りが強まると、俺の無節操な息子ははしたなくもち上がり、まるでびへつらうかのように腰が揺れる。においだけで猫を相手に発情できるなんて、特殊性癖でしかないというのに。すっかり淫乱いんらんな変態に調教されてしまい、涙が出そうだ。
「今夜はさくだね」
 桜香おうこうが、妙にご機嫌だ。嫌な予感はすれど、ついさっきまでしぼり取られ、息も絶え絶えになっていた俺は、何も言えずに耳だけを傾ける。
「僕たちの新たな門出に、相応ふさわしい夜だ」
 恐らくそれは、桜香おうこうが俺からしぼり取れるだけのたねしぼり尽くしたことを表していた。つまりは、俺がメスネコにされてしまう時が来てしまった訳で……
 腰の砕けた体に鞭打むちうち、少しでも距離を置こうとした俺を易々やすやすと捕まえた桜香おうこうは、そのまま俺にのしかかってうなじにざらつく舌をわせた。熱くぬめった感触が、本来なら気色悪いはずなのに、背筋がふるえて息が上がり、視界に涙の膜が張る。
「ふうっ、ううぅ……」
「ふふ、うれし泣きかな?」
「ううっ、勝手に、言ってろよ、んぅ」
 口では意地を張ったけれど、本当はとても怖い。今でさえ桜香おうこうのペースに流されて、俺が俺として理性を保っている時間なんてそんなにないのに、これ以上、何が起こるというのか。
「大丈夫だよ、にしき
 いっそ優しい桜香おうこうの声に振り返ったことを、俺は瞬時に後悔した。
「身も心もネコになるだけだから」
 ギラギラとかがやく金色のは、俺をのがすつもりなど一切ないことを如実にょじつに示していて。
「ちゃーんと人間同士のセックスも教えてもらったし、もう不満にはさせない。にしきは僕の下で、可愛かわいく鳴いていれば良いよ」
 尻に感じる熱くて硬いソレは、きっとそういうことなのだ。散々抱いてきた桜香おうこうに、今度は俺が再び抱かれる番が来た、それだけのこと。今まで半月も好きに抱いてきたのだから、当然の報い。
 そう思い込みでもしないと、恐怖でふるえが止まらない。実際は好きに抱いたというよりも、向こうの好きにしぼり取られたようなものだと思うけれど、それでも俺が抱く側だったことには変わりないのだから。
 だから、桜香おうこうあおりに、うっかり不本意だと反論してしまったのだ。
「本当にイヤなら、もっと抵抗するもんね?」
「……先に手を出したのは、俺たちなんだろう? 責任くらい取れなくてどうする」
 桜香おうこうは一瞬、虚をつかれたような顔をした。
「本当にもう、にしきったら。どこまで僕を挑発したいの?」
 優しすぎるのも問題だね? などとうそぶきながら、大きな猫は俺のうなじを再度め上げ、耳に舌を突っ込んできた。人によって耳が弱い、というのは俺にも当てはまっていたらしく、喉からあられもない悲鳴がれてしまう。
「こうなったら、にしきがグズグズのトロトロになるまで、優しく可愛かわいがってあげるしかないじゃないか」
 ヌチャ、ペチャ、とれた音が鼓膜こまくから脳をおかす。まだ本番に至ってもいないのに、気がくるいそうだ。
「ひぁ、う、」
「耳だけでこんなにらしてヘコヘコさせちゃって、最後まで腰がもつかな?」
「言う、な、あぁっ!」
 フーッと湿った耳に息を吹きかけられただけで、俺は情けなくもイッてしまう。
 今夜はいつになく長くなりそうだった。

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