01 プロローグ

 奥の奥、一番弱いところにグリグリと刺激を与えられ、甘ったるい悲鳴が止められない。
「や、あ、ああ、やめ、や、」
「や、じゃないよね?」
「ひあああっ!」
 後ろからうなじまれてしまうと、もうダメだった。桜香おうこうは、俺をはらませる気満々のようだし、俺もそれに逆らえない。
 ガクガクとふるえるだけの体から更に力が抜けて、上半身がシーツの海に完全にしずむ。くさびつらぬかれた腰だけが高く持ち上げられ、慣れることのない羞恥しゅうちに余計に涙があふれた。
「やぁ、も、やにゃの、ふ、みゃあああああああ⁉︎」
 慣れないといえば、この、胎内たいないに熱い飛沫しぶきを受け止めた後の灼熱しゃくねつのような痛みも、何回もはらまされているのに、どうしても慣れられない。まあ、排卵を誘発するための痛みなんだから、慣れてしまうと意味がないのは理屈りくつではわかる。でも痛い。
 フーッ、フーッと必死に荒い息を整えていると、既に自身の後始末を終えたらしい桜香おうこうが、そっと俺の尻尾を横に持ち上げ、俺の代わりに尻のあなめ始めた。イった直後の、ひどく敏感な体には、これもツラい。ついでに、色んな意味でずかしい。元人間の常識的にも、体の硬さ的にも、後始末で感じてしまうのも。
「んっ、ん……」
「まぁた声我慢がまんしちゃって、にしきったら」
 頼むから、そこで笑って息を吹きかけないでほしい。そして、そんなにリズム良く尻尾の根元をたたかないでほしい。今まさにヤられたところだっていうのに、もう体はその気になって腰ごと尻尾を持ち上げようとしている。
 本当に、かつて桜香おうこうに宣言された通りに、俺の身も心もネコにされてしまったなと思う。正確には、オメガの猫又ねこまたおす、なんだろうけど。
「そういう意地っ張りなところも、可愛かわいいよ」
「うー……」
「こんなに素直でヤらしい体にされちゃったのに、まだそうやってずかしがるの、本当にいつまでも初心うぶ可愛かわいい」
「だっ、誰の所為せいだと……!」
 ハッとして言葉を飲み込んだ時には、もうおそかった。まだあとも治らない後ろのうなじにザラリとれた舌がう。桜香おうこうの片手は俺の尻尾をつかんで引っ張り、もう片方の手は俺の胸元でまだ赤く色付く乳首に軽く爪を立てた。
「〜〜〜〜〜っ!」
 カクカクと無様ぶざまに腰がれ、ほとんど色のない精液ミルクを中心から吐き出した。
「ふふ、僕の所為せいかな? 何も知らないにしきをこの世界にさらってきて? こんな可愛いメスネコに仕込んじゃって? いっぱい種付けしてるのは、確かに僕だもんねぇ?」
 声こそ笑っているみたいに聞こえるけれど、尻尾を引っ張っていた桜香おうこうの手は俺の鈴口をいじり始めたし、乳首はまだねられてるし、頭上で俺の猫耳に息を吹きかけながら言われると、本当に、たまれない。だって、それは俺が教えてしまったことだから。
 それこそ猫のような交尾しか知らなかった桜香おうこうに、人間同士のある意味濃厚すぎるセックスを仕込んだのは、俺なんだよなぁ……。ううぅ。なまじ桜香おうこうが、猫又ねこまたという、そういうのが気持ちイイと理解できる種族なのも、悪かった。
「考え事なんて、余裕よゆうだね?」
 次いで与えられた痛みですら、しおを吹くほどの快感に変換してしまうようになった自分が、心底ちてしまったのを感じる。結局のところ、俺はもうとされていて、桜香おうこうにもたらされる全てが気持ち良くて仕方ないんだ。
 ああ、おなかが、切なくうずいている。きっと、もう、オメガの発情フェロモンも出ているだろう。
 俺は桜香おうこうびるべく、メスネコがさそう声を出した。

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