七月【誕生花・リリー/誕生石・ルビー】(GL)

 お忍びの視察という名目で、今日も城下町を散歩する。仕方のない子、と苦笑する母様には、きっと私の真の目的などお見通しなのだろう。それでも咎められたことがないのは、その目的ゆえに、私が決して護衛を拒まないからに違いない。
 私の隣を歩くのは、私の筆頭護衛騎士。お忍びの視察という今の設定に合わせて、いつもの斜め後ろではなく、すぐ横を仰ぎ見れば微笑み返してくれる。
 はぐれないようにね。そう言って毎回差し出される、皮膚の硬くなった温かい手が好き。兄妹、もしくは仲の良い恋人同士のように、手を繋いで歩いてくれるのが好き。普段は澄まして無表情なのが嘘のように、様々な笑顔を見せてくれるのが好き。少しだけ日に焼けて、それでもやっぱり色白の顔を柔らかく包む紅い髪がふわふわと風に遊ばれて、瞳に映る私の顔までなんとなく赤い気がする。
「おや、リリー嬢ちゃん。またルビーとデートかい?」
「で……っ、デートだなんて、はしたないですわ!」
 ついつい、いつものように街ゆく住民にからかわれ、反射的に否定してしまった。違う、否定したかったんじゃない。恥ずかしかっただけだ。
 居た堪れなくなって視線が下へ向かう。横で、ブハッと笑う気配がした。
「リリー、照れすぎ。シュンとしてるのも可愛いけど、地面なんか見ないで、僕だけ見てて?」
 気取る風もなく、歯の浮きそうな言葉を自然に言ってのける、私の筆頭護衛騎士。お城だと、あんなに無表情で、無口なのに。
 ああ、本気でリリーは『ルビー』に惚れてしまいそう。でも、それは儚い夢なのだ。
 だって、私は知っている。姫たる私には、この先、政略結婚が待っている。そして女性王族につく護衛騎士は、過ちのないよう、全員女性で構成されているのだ。


【リリー】
花言葉:「純粋」「無垢」「威厳」
華やかで洗練されている印象を与える花です。主に初夏から夏にかけて良い香りで咲きます。

ユリがGLの隠語として有名であることから、男装騎士に恋する姫の設定となった。
6月と、同じといえば、同じパターン。
リリーはお忍び時の仮名だが、国民には割と正体がバレている。指摘されていないだけ。

 

【ルビー】
石言葉:「情熱」「仁愛」など
深い赤色が特徴的な宝石で、ダイヤモンドに次ぐ硬さを持っています。

男性にも喜ばれる宝石らしいということから男装が決定した。
見事な赤毛の騎士で、その髪の色からお忍びの時の仮名がルビーになったという設定。
芝居がかったような、軽薄かつ気取った風の言葉遣いを割と楽しんでいる。