絡繰異聞

未来系ドタバタファンタジー騒動譚。
通信頒布→クロスフォリオ

 夜見よみベルノさんの読書実況で取り上げていただいております!

絡繰異聞・本編の読書実況感想 – 旅人ノ夢 (tabi-yume.jp)

ギャラリー

プレゼン資料から

2020年

2021年6月

2021年8月

2022年11月(すざくリンさん作)

動画

無音PV

関連雑記

絡繰異聞(主に前日譚)・脳内アニメ化妄想! – 旅人ノ夢 (tabi-yume.jp)

絡繰異聞のホロスコープ読んでもらった! – 旅人ノ夢 (tabi-yume.jp)

絡繰異聞・前日譚(第二版)

絡繰仕掛けの人形たち。かつては人間だった彼等の物語。

堕天使

アルビノの少年は空を望んだ。

  • 今までの日常

     大きな音と共に、大きな|影《かげ》が走って、頭の上から強い風が、|押《お》さえつけてきた。だから、まとっている布が飛んでいかないように、ぎゅっとする。だって、これがなくなると、体がピリピリするし、後からブクブクの元にもなるから、手放すわけ…

  • 不穏な空気

     今日はキラキラ、あんまりお金にならなかったな。このお金だったら、ええと、うん。やっぱり、シオンのお薬の、三回分にしかならないや。 シオン、ゼーゼーしてるから、もっとお薬がほしいのにな。「ふむ。飛行場周囲のスラム、スクラップ場に|棲《す》む…

  • とんでもない場所

     布にくるまれ、ほぼ目かくし状態でレンコーされて、遠く遠く、来てしまった。もう上が暗いのか暗くないのかもわからないくらい、なにも見えないまっくらやみ。いつものようにシオンの待つ家へ帰れる気がしなくて、身体がふるりとした。 ……シオンは、ちゃ…

  • アマネにぃ

    「|僕《ぼく》は|幸崎《こうざき》|天音《あまね》。|天音《あまね》って呼んでくれたら良いよ」 イヤなニンマリをするオニーサンは、アマネというらしい。今は、ニンマリじゃなくて、カケルにぃみたいにニコニコしている。「さあ、呼んでごらん? |天…

  • 幸崎天音と自分

     連行されてから、結構な月日が過ぎてしまった。|詩音《しおん》の無事は、知れない。 あまりにも自分が|詩音《しおん》のことを考えすぎるものだから、|天音《あまね》にぃが休日に家まで|付《つ》き|添《そ》ってくれたことがある。けれども、家は|…

  • 実験の足音

     |幸崎《こうざき》|天音《あまね》が、ニンマリと笑っている。「そろそろ、|璃音《りおん》の実験の話をしよう」 もう、実験の内容は、他の|被験者《ひけんしゃ》で何度も見てきた。人間を、機械人形に変える実験だ。 実験が成功しようがしまいが、人…

  • 堕天使の素体

     |天音《あまね》にぃは、キレイなものが好きだと思う。 目の前に|佇《たたず》む、未来の自分の|素体《そたい》を見て思う。 鏡で見ている自分の|面影《おもかげ》はある。けれど、それ以上に目の前のこの人形は|端正《たんせい》に整った顔立ちをし…

  • 順調ではない実験

     くらっと、目が回った。いわゆる立ちくらみというやつだ。 実験の経過で、|避《さ》けては通れない有害事象だと、知っている。段々立ちくらみの|頻度《ひんど》が増えて、|記憶《きおく》が|曖昧《あいまい》になって、身体が動かせなくなって、ついに…

  • 翼の覚醒

     気がついたら、宙を|漂《ただよ》っていた。眼下では、|天音《あまね》にぃが、動かなくなったかつての自分を|抱《だ》きかかえて|泣《な》き|喚《わめ》いている、気がする。でも、音は聞こえない。 これは、|噂《うわさ》に聞く、|幽体離脱《ゆう…

  • 堕天使

    「バカバカ、この大馬鹿っ!」 |天音《あまね》にぃは、ご立腹だ。飛行実験と飛行訓練の後、|唐突《とうとつ》に|天音《あまね》にぃの自室に呼び出されたから、何事かと思った。 ご立腹そうな|天音《あまね》にぃだけど、|普段《ふだん》なら|怖《こ…

創造主

マッドサイエンティストは友だちを望んだ。

  • 追憶の始まり

     この研究を始めた|頃《ころ》は、まさかこんな事態になるとは予測もしていなかったなぁ、と、|爆発音《ばくはつおん》と共に時折|揺《ゆ》れる研究所の中で思う。 |身体《からだ》はもう、|殆《ほとん》ど動かないし、思考も|霧《きり》がかかったよ…

  • 日常の崩壊

    「……ふうん、|一ヶ月《いっかげつ》ねぇ」 思わず、口から|漏《も》れ|出《で》ていた。確かに、そろそろ|粛正《しゅくせい》される|頃合《ころあ》いかな、とは思っていたけれど。 |僕《ぼく》の元々の研究動機を|璃音《りおん》が満たしてくれた…

  • 偽りの仮面

     |振《ふ》り|返《かえ》るのには、多大な気力を要した。|更《さら》に言葉を|捻《ひね》り|出《だ》すのには、|全身全霊《ぜんしんぜんれい》を|掛《か》けた。「|璃音《りおん》。君は、行かないの?」 |僕《ぼく》の|瑠璃色《るりいろ》の|堕…

  • 転換点

     |曰《いわ》く、|素直《すなお》じゃないのも|大概《たいがい》にしろだとか。|曰《いわ》く、|肝心《かんじん》なときに大人ぶるのは、最低だとか。 結構グサグサと|遠慮《えんりょ》なく|僕《ぼく》の心を|滅多刺《めったざ》しにしてきた|璃音…

  • 研究動機

     まあ、こうなることは、予想の|範疇《はんちゅう》内ではあった。あったんだけど、やっぱり、思わず、ため息が出てしまった。「これじゃあ|僕《ぼく》、若返るしかないな。骨格なんて、|璃音《りおん》とどっこいどっこいのしか作れそうにないや」 何の…

  • 今後を思う

     特に自分自身に能力なんて望んだことがなかったし、材料のこともあるし、特にオプションもなくオーソドックスな造りの|素体《そたい》にしようかと考えていたのだけれど、ふと、前提条件が|間違《まちが》っていたことに気付いたのが、さっき。 この研究…

  • ブラックボックス

     そんなこんなを経て、なんとか|素体《そたい》が完成しそうです、わーぱちぱち。 |璃音《りおん》と並べることを考えながら作ったせいか、本来似せるはずだった、若かったときの写真の|僕《ぼく》よりも|可愛《かわい》くなっちゃったけどね! |璃音…

  • のぞんだ結末

     |爆発音《ばくはつおん》がして、また|壁《かべ》が|震《ふる》えた。 本当、この|一ヶ月《いっかげつ》は|忙《いそが》しかった。色んな意味で|璃音《りおん》の|所為《せい》だけれど、だからといって|璃音《りおん》に会わない人生なんて|恐《…

  • 訣別

     あれ、ここは|何処《どこ》だろう。|璃音《りおん》は、|何処《どこ》に行ったんだろう? |見渡《みわた》す限り、|瓦礫《がれき》の山だ。スクラップになっている機械群に、何となく見覚えがあるような、ないような。「|璃音《りおん》?」 呼んだ…

  • 蛇足

     |誰《だれ》かが笑っていて、|誰《だれ》かが泣いていて、|誰《だれ》かが|怒《おこ》っていて、|誰《だれ》かが|嘆《なげ》いていた。 世界は、|壁《かべ》一枚|隔《へだ》てた向こう側に在り、出来の悪い映画のようなソレを、|偶《たま》に|壁…

贄人形

廃棄人形は拾われ、自我を得た。

  • まるで水槽の中

     こぽ、こぽぽ。 |気泡音《きほうおん》を|子守唄《こもりうた》代わりに聞きながら、意識は|微睡《まどろ》みよりも|更《さら》に深く|沈《しず》んでいる、自覚があった。 思考がまとまる気配もなく散り散りで、自身の置かれている|状況《じょうき…

  • 人形の生い立ち

     ……こういうのを、|走馬灯《そうまとう》とか言うのだったか。思い返すのにも、あまり時間のかからない、短くて取るに足らない人生だった。 古くからの名門と名高き|有楽部家《うらべけ》の長子として生まれながら、|双子《ふたご》の弟、|光希《みつ…

  • 拾われてから

     拾われてからの日々は、それまでとの|違《ちが》いに|戸惑《とまど》うことも多く、生まれて初めて色々と考えさせられた。 拾ってくれたのは、少しばかり色合いが派手で、ついでに顔立ちもとても整っていて、結構目を引く二人組だった。|瑠璃色《るりい…

  • 受け入れられない

     |嗚呼《ああ》、|何故《なぜ》、|廃棄《はいき》する前に処分しておいてくれなかったのだろうか。人形は、|中途半端《ちゅうとはんぱ》な|自我《じが》に目覚めてしまった。 今になって、改めて処分されたのだと、そしてもう、命が|潰《つい》えかけ…

  • 詩音との出会い

     耳元で|気泡音《きほうおん》が鳴っている。もう、目を開ける力も残っていないけれど、|瞼《まぶた》の裏に映る光からして、簡易的な|医療用培養槽《いりょうようばいようそう》にでも入れられているのだろうか。それでもきっと、数時間の延命がやっとだ…

  • 人形の目にも涙

    「お|疲《つか》れ|様《さま》、|璃音《りおん》。まさか今になって、|有楽部《うらべ》|闇呪《あんじゅ》を消しにかかってくるなんてね。なんて言うか、向こうも|暇人《ひまじん》だよね」 |天音《あまね》がニンマリとした、あまり気持ちの良くない…

  • 人間卒業への第一歩

     そして|天音《あまね》は本当に、|璃音《りおん》を引き連れて自分の|寝《ね》ている部屋に来た。「|奏音《かのん》。まだ生きてる?」 あんまりと言えばあんまりな言い方だけれど、聞きたいことはよく分かるので、さて本体は|何処《どこ》がまだ動く…

  • 未来への願いごと

     |電子文字盤《でんしもじばん》を接続してもらえたので、|遣《や》り|取《と》りが|随分《ずいぶん》楽になった。元々、特定の病気の|患者《かんじゃ》のために脳波を読み取るタイプの|文字盤《もじばん》だったらしく、非常に快適に、動いてくれる。…

  • 新しく始める

     いつものように|監視《かんし》カメラを通して、自分の姿を|眺《なが》めている。 一番|懸念《けねん》された、脳の機械への|置換《ちかん》が記録的な早さで成功したため、ひとまず、存在|消滅《しょうめつ》の危機は過ぎ去ったらしい。だから後は|…

  • 穏やかな日々

     ふわふわり、今日も意識の|欠片《かけら》はネットを|漂《ただよ》い、|詩音《しおん》の|行方《ゆくえ》を|捜《さが》しています。ご本人の存在はものすごく身近なんですけれど、本体の|行方《ゆくえ》が厳重に|隠《かく》されているのですよね。 …

絡繰異聞・本編(第二版)

絡繰師と呼ばれた都市伝説が引き起こした騒動譚。

  • 『かくて騒ぎが持ち上がる』嵐の予感

     都市伝説がある。その名を、|絡《から》|繰《くり》|師《し》。|滅《めっ》|多《た》に|表《おもて》|舞《ぶ》|台《たい》には姿を現さない、|騒《そう》|動《どう》の|仕《し》|掛《か》け|人《にん》たち。 一人は|騒《そう》|動《どう》…

  • 『かくて騒ぎが持ち上がる』火付けと火消し

     |絡《から》|繰《くり》|師《し》|随《ずい》|一《いち》の|問《もん》|題《だい》|児《じ》、|騒《そう》|動《どう》の火付け人、その名は|天《あま》|音《ね》。ひとたび|表《おもて》|舞《ぶ》|台《たい》に姿を現せば、それは天災の合図…

  • 『かくて騒ぎが持ち上がる』機械仕掛けの人形たち

     それは、|狂《くる》った研究者の作品群、|哀《かな》しき|被《ひ》|害《がい》|者《しゃ》たちの|総《そう》|称《しょう》と言われている。 一人一人に何かしらの特技が|付《ふ》|与《よ》された、機械|仕《じ》|掛《か》けの|人《にん》|形…

  • 『かくて騒ぎが持ち上がる』龍神警備会社

     |奏《か》|音《のん》が|天《あま》|音《ね》のハッキングに成功し、|瓦《が》|礫《れき》に|埋《う》もれる少し前。所変わって、|龍《りゅう》|神《じん》|警《けい》|備《び》|会《がい》|社《しゃ》の社長室。 緑なす|黒《くろ》|髪《か…

  • 『かくて騒ぎが持ち上がる』ほんの序章に過ぎない

     ショッピングモールだったその場所は、今や、|半《はん》|壊《かい》した|瓦《が》|礫《れき》の山となっていた。あちらこちらで、人の泣く声が|途《と》|絶《だ》えない。 自治体による救助隊は|未《いま》だ|到《とう》|着《ちゃく》しておらず…

  • 『かくて奏音は拒絶する』恐ろしい妄想

     |奏《か》|音《のん》の本音からすれば、なるべく、動きたくはなかった。|身体《からだ》のあちらこちらに負ったダメージは大きく、動かす|度《たび》にエラーを伝えてくる。 後から|天《あま》|音《ね》と|璃《り》|音《おん》に回収してもらおう…

  • 『かくて奏音は拒絶する』無理は祟る

     ぼんやりとした様子だった少女が、見る見るうちに、|顔《かお》|色《いろ》を失っていく。|彼《かの》|女《じょ》はバネ|仕《じ》|掛《か》けの|人《にん》|形《ぎょう》のように上体を起こし、ブンブンと首を|振《ふ》った。「だっ、|大《だい》…

  • 『かくて奏音は拒絶する』自爆条件の穴

     場を|沈《ちん》|黙《もく》が支配した。|自《じ》|爆《ばく》とはまた、心|穏《おだ》やかならぬ単語が飛び出したものだ。 強制シャットダウン状態の|奏《か》|音《のん》は、気絶しているようにしか見えない。|耀《かぐ》|夜《や》は、この少女…

  • 『かくて奏音は拒絶する』耀夜の憂鬱

     |奏《か》|音《のん》にとって|幸《さいわ》いだったのは、システムダウンしていたのが、自分の意識だけだったことだろう。人間|偽《ぎ》|装《そう》プラグラムが呼吸や脈、体温などの存在を演出し続け、その数値が落ち着いていたことから、ひとまず|…

  • 『かくて奏音は拒絶する』引き出された譲歩

     |耀《かぐ》|夜《や》が|屋《や》|敷《しき》の|扉《とびら》を開けた|瞬《しゅん》|間《かん》、使用人たちは|揃《そろ》って|安《あん》|堵《ど》の表情を|浮《う》かべた。「|彼《かの》|女《じょ》は」「せめて|汚《よご》れを落としてお…

  • 『かくて奏音は拒絶する』根深い断絶

     |浴《よく》|槽《そう》には十分に湯が張られていたが、万が一損傷部分から内部機構に湯が入ると大変なことになる。そのため、|奏《か》|音《のん》は|恐《おそ》る|恐《おそ》る|腕《うで》だけを|湯《ゆ》|桶《おけ》に付けて、|大《だい》|丈…

  • 『かくて耀夜は白華を構う』名乗らないなら名付ければ良い

     |耀《かぐ》|夜《や》の前で|車《くるま》|椅《い》|子《す》に|座《すわ》る少女は、使用人たちが用意した|白《しら》|藍《あい》|色《いろ》のワンピースに身を包み、じっと動かない様子も相まって、まるで|人《にん》|形《ぎょう》のようだっ…

  • 『かくて耀夜は白華を構う』頼れないなら頼らせるまで

     消灯された部屋の中、|白《はっ》|華《か》と名付けられた少女が、|寝《しん》|台《だい》に|寝《ね》かせられた姿勢そのままに、ぼんやりと|天《てん》|井《じょう》を|眺《なが》めている。「|白《はっ》|華《か》……ですか」 ふと、その|瞳…

  • 『かくて耀夜は白華を構う』甘えなくとも甘やかす

     |白《はっ》|華《か》と少女を名付けたは良いものの、|彼《かの》|女《じょ》は|耀《かぐ》|夜《や》や周囲の|与《あた》えようとするものをことごとく断ろうとしたため、結局|耀《かぐ》|夜《や》に気の休まるときはなかった。 まず翌朝、新たな…

  • 『かくて耀夜は白華を構う』ハッカーの白華

     そして案の定、|騒《そう》|動《どう》は起こった。|耀《かぐ》|夜《や》の予想を|斜《なな》め|上《うえ》に行く方向で。 |携《けい》|帯《たい》用の小さいものとはいえ、|通《つう》|信《しん》|端《たん》|末《まつ》を手に入れた|白《は…

  • 『かくて耀夜は白華を構う』開かない扉はこじ開ける

     うっかりしていた、と|白《はっ》|華《か》が思ったのは、|扉《とびら》の外で|物《ぶっ》|騒《そう》な音が聞こえるからだ。 |白《はっ》|華《か》にとって、|電《でん》|子《し》機器への|侵《しん》|入《にゅう》は、それこそ息をするよりも…

  • 『かくて綻び始める』アンジェの告白

     |耀《かぐ》|夜《や》の前で、見事に縮こまっている、|白《はっ》|華《か》。一応、悪いことをしたという自覚はあるらしい。視線はきょときょとと|揺《ゆ》れ、全く落ち着きがなかった。 背後に|真《ま》|理《り》|亜《あ》と|聖《せい》|也《や…

  • 『かくて綻び始める』アンジェの仕事

     |白《はっ》|華《か》の提示したアンジェという名には、|皆《みな》それぞれに聞き覚えがあった。「もしかして、|破《は》|壊《かい》テロの|書《か》き|込《こ》みをしたか?」 代表して|耀《かぐ》|夜《や》が|訊《たず》ねると、|白《はっ》…

  • 『かくて綻び始める』耀夜の懸念

     アンジェというハンドルネームとその後の告白が|衝《しょう》|撃《げき》|的《てき》すぎたため、|何故《なぜ》|扉《とびら》を|施《せ》|錠《じょう》したのかといった問題が|吹《ふ》き|飛《と》んでしまったと|耀《かぐ》|夜《や》が気付いた…

  • 『かくて綻び始める』奏音の決意

     |流《さ》|石《すが》にもっと何かあると思ったのに、と|白《はっ》|華《か》は|途《と》|方《ほう》に暮れる。 相手は人間。人間なのだ。そう、自らに言い聞かせ続けないといけないくらい、|耀《かぐ》|夜《や》の存在は|白《はっ》|華《か》の…

  • 『かくて都市伝説は現れる』狼煙は上がった

     その夜も|聖《せい》|也《や》は、|耀《かぐ》|夜《や》に|頼《たの》まれたとおり、|律《りち》|儀《ぎ》に|屋《や》|敷《しき》のセキュリティシステムを|監《かん》|視《し》していた。 だから一番最初に異変を察知したが、一番最初に頭を|…

  • 『かくて都市伝説は現れる』真理亜は走った

     |真《ま》|理《り》|亜《あ》が異変に気付いたのは、窓の外の気配が、いつもとは少し、異なるように感じられたからだ。 異変を|嗅《か》ぎつける感覚については|真《ま》|理《り》|亜《あ》は|天《てん》|賦《ぷ》の才をもっており、その才能|故…

  • 『かくて都市伝説は現れる』耀夜は誤認した

     |耀《かぐ》|夜《や》は、頭を|掻《か》き|毟《むし》りたい気分だった。もしくはいっそ、馬鹿になったみたいに|叫《さけ》びたかった。 |先《さき》|程《ほど》から、続々とトラブルの報告ばかりが寄せられてくる。しかも、|通《つう》|信《しん…

  • 『かくて都市伝説は現れる』仮説は暴走した

     |耀《かぐ》|夜《や》は|白《はっ》|華《か》の部屋へ、走る。その頭の中で加速度的に、|連《れん》|鎖《さ》していく、|恐《おそ》ろしい推測。 そう、それはただの仮説。 馬鹿馬鹿しい都市伝説が、本当に実在していたのであれば? |絡《から》…

  • 『かくて都市伝説は現れる』璃音は舞降りた

     セキュリティシステムの|掌《しょう》|握《あく》も、近辺の|通《つう》|信《しん》電波の|掌《しょう》|握《あく》も、|完《かん》|了《りょう》した。このあたりの作業は|奏《か》|音《のん》にとって、前菜のようなものに過ぎない。 |璃《り…

  • 『かくて暴かれるのは』奏音の翻心

     人が部屋に|駆《か》け|付《つ》ける足音を背に、|奏《か》|音《のん》は意識して口角を|吊《つ》り|上《あ》げた。けれど、|璃《り》|音《おん》の表情は悲しそうなまま。 それもそのはず、|奏《か》|音《のん》がにっこり|穏《おだ》やかに笑…

  • 『かくて暴かれるのは』白華の正体

     |唐《とう》|突《とつ》に開いた|扉《とびら》に、|耀《かぐ》|夜《や》と、|咄《とっ》|嗟《さ》に|倒《たお》れそうになった|彼《かの》|女《じょ》を支えた|真《ま》|理《り》|亜《あ》が、体勢を|崩《くず》しながらも部屋に|傾《なだ》…

  • 『かくて暴かれるのは』唯一の例外

     セキュリティシステムの復活を|確《かく》|認《にん》した|聖《せい》|也《や》が合流し、いつぞやの昼と全く同じ|面《めん》|子《つ》が|集《つど》うのは、所移して|耀《かぐ》|夜《や》の|書《しょ》|斎《さい》である。 机の上に散らばった…

  • 『かくて暴かれるのは』風薫の来訪

    「関係は大いにありますが、私の能力|故《ゆえ》に頂いたわけではないのです」 語る|白《はっ》|華《か》の表情は|憂《うれ》いに|沈《しず》み、視線はどこか遠くを見ているよう。「もし、私がハッキングが得意ではなかったとしても、きっと同じく、あ…

  • 『かくて暴かれるのは』幽霊の追手

    「|面《おも》|白《しろ》いことに首を|突《つ》っ|込《こ》んでいるわね」 |挨《あい》|拶《さつ》もそこそこに|笑《え》|顔《がお》で言う、長い|白《はく》|髪《はつ》に、|紅《あか》い|瞳《ひとみ》の女性。情報屋、|風《ふう》|薫《か》…

  • 『かくて明らかになる』風薫の執念

     |白《はっ》|華《か》の|泊《と》まっていた部屋は|綺《き》|麗《れい》に片付けられており、生活感に|乏《とぼ》しかった。「本当にここに|泊《と》めていたんでしょうね」「|今《いま》|更《さら》|嘘《うそ》|吐《つ》いてどうするっすか。疑…

  • 『かくて明らかになる』罠の中

     |聖《せい》|也《や》が|戻《もど》ってこないからと、|耀《かぐ》|夜《や》の|書《しょ》|斎《さい》では、アンジェの開く雑貨店の話に花が|咲《さ》いていた。|聖《せい》|也《や》が|抜《ぬ》ければ、その場にいるのは女性のみ。|当《あ》た…

  • 『かくて明らかになる』機械の躰

     それは、一見傷の治った、|滑《なめ》らかな|皮《ひ》|膚《ふ》。内出血の|痕《あと》すらも無く。 けれどそれを|一《いち》|瞥《べつ》した|堕《だ》|天《てん》|使《し》は、ますます悲痛な顔をして、|奏《か》|音《のん》に|懇《こん》|願…

  • 『かくて明らかになる』絡繰子の業

     |奏《か》|音《のん》が|寝《しん》|台《だい》に|寝《ね》かされた後、|罠《わな》から救出された|堕《だ》|天《てん》|使《し》は|耀《かぐ》|夜《や》に頭を下げた。「改めて、|奏《か》|音《のん》が世話になっている。自分は|璃《り》|…

  • 『かくて歯車は集う』応急修理

     |璃《り》|音《おん》の持ってきた部品でひとまずの応急修理を|施《ほどこ》され、|奏《か》|音《のん》が意識を|取《と》り|戻《もど》す。「お前、本当は|奏《か》|音《のん》というのか」 開口一番、名前のことから切り出す|耀《かぐ》|夜《…

  • 『かくて歯車は集う』メンテナンス

     感謝をされた方の|耀《かぐ》|夜《や》は、|朗《ほが》らかに笑った。「助けになれたなら、それが私にとっても救いだ。修理に設備が必要なら、|奏《か》|音《のん》は帰るべきだな?」 頭を|抱《かか》えていた|奏《か》|音《のん》が、|更《さら…

  • 『かくて歯車は集う』風薫の謝罪

    「私の残す|痕《こん》|跡《せき》に食い付けるのですから、相当な技術力は持っていると判断します。|耀《かぐ》|夜《や》さまに忠実なところとか、何だかんだで誠実なところもポイント高いです」 一息に|褒《ほ》めきって、ただ、と|奏《か》|音《の…

  • 『かくて歯車は集う』天音の迎え

     再び|警《けい》|戒《かい》|度《ど》を上げた|奏《か》|音《のん》に、|風《ふう》|薫《か》は|切《き》り|込《こ》んだ。「シオンって、|誰《だれ》」 |奏《か》|音《のん》は|咄《とっ》|嗟《さ》に|璃《り》|音《おん》の様子を|確《…

  • 『かくて歯車は集う』詩音の謎

    「救い出す、とはまた、|穏《おだ》やかじゃないな」 |耀《かぐ》|夜《や》はそう言いつつも|膝《ひざ》をつき、|寝《しん》|台《だい》に|座《すわ》る|奏《か》|音《のん》と、視線の高さを合わせようとする。|真《ま》|理《り》|亜《あ》に|…

  • 『かくて歯車は集う』禁忌の産物

     そして、|沈《ちん》|痛《つう》な|面《おも》|持《も》ちの|奏《か》|音《のん》は、室内の|誰《だれ》もが|抱《いだ》いた|不《ふ》|穏《おん》な予感を裏切ることもできず、告げた。「それが、|詩《し》|音《おん》です」 |一《いっ》|拍…

  • 『かくて地固まる』常識外れたち

     |璃《り》|音《おん》が連れてきた|天《あま》|音《ね》は、本来の|幸《こう》|崎《ざき》博士よりも若かった。等身大で作るには、当時部品が足りていなかったというのが本人の弁である。「それに、|璃《り》|音《おん》とお|揃《そろ》いに作れる…

  • 『かくて地固まる』プログラマーたち

     メンテナンスの順番としては、|先《ま》ずは|奏《か》|音《のん》が|天《あま》|音《ね》を軽く|確《かく》|認《にん》してバグがなければ|奏《か》|音《のん》の修理と点検がその次。|天《あま》|音《ね》のバグの原因探しには時間がかかる可能…

  • 『かくて地固まる』傍観者たち

    「|詩《し》|音《おん》のこと、|奏《か》|音《のん》から聞いたわよ。救い出して|欲《ほ》しいって、|耀《かぐ》|夜《や》お姉さまに、|訴《うった》えていたわ」 |風《ふう》|薫《か》の言葉に、|璃《り》|音《おん》は|一《いっ》|瞬《しゅ…

  • 『かくて地固まる』道化師たち

     次の|沈《ちん》|黙《もく》を破ったのは、|天《あま》|音《ね》の笑い声だった。「|風《ふう》|薫《か》って名前だっけ? キミもなかなか言うねぇ。こんなにコテンパンにされた|璃《り》|音《おん》はボク、初めて見るかも!」 でもね、と続ける…

  • 『かくて機械屋の本領発揮』大改造

     全ての修理とメンテナンスが終わって、|奏《か》|音《のん》が目を覚ましたとき、作業開始から|既《すで》に|三《さん》|ヶ《か》|月《げつ》|経《た》っていたこともあり、|絡《から》|繰《くり》|師《し》の存在はすっかり|龍《りゅう》|神《…

  • 『かくて機械屋の本領発揮』現状把握

     |奏《か》|音《のん》の大改修に|三《さん》|ヶ《か》|月《げつ》も|掛《か》かったからには、|天《あま》|音《ね》の方も、短く見積もってすら、|恐《おそ》らく同程度|掛《か》かるだろうというのが、|皆《みな》の|一《いっ》|致《ち》した…

  • 『かくて機械屋の本領発揮』進捗状況

     果たしてその|三《さん》|ヶ《か》|月《げつ》後、|奏《か》|音《のん》は精神的に|疲《ひ》|労《ろう》|困《こん》|憊《ぱい》していた。さっくり予定通りに終わったのは|璃《り》|音《おん》のプログラムメンテナンスのみ。|天《あま》|音《…

  • 『かくて機械屋の本領発揮』休憩時間

     |詩《し》|音《おん》が救出され、|脱《だっ》|出《しゅつ》するということは、世間的にはザイオンサーバーが|陥《かん》|落《らく》するのとほぼ同義だ。|難《なん》|攻《こう》|不《ふ》|落《らく》の大容量ネットサーバーとして、一流と言われ…

  • 『かくて機械屋の本領発揮』最終確認

    「ボク、ふっかーつ!!」 再起動されて開口一番に|叫《さけ》んだ|天《あま》|音《ね》に向けられた視線は、半分が生温かいものであったが、残り半分は|緊《きん》|張《ちょう》を|孕《はら》んでいた。最終動作|確《かく》|認《にん》の最中とあっ…

  • 『かくて月夜に騒ぎを起こす』真理亜は社長に物申す

     |詩《し》|音《おん》の救出作戦が実行に移されたのは、月が|煌《こう》|々《こう》と|輝《かがや》く夜だった。 陽動は|璃《り》|音《おん》と|風《ふう》|薫《か》が大半を務め、|奏《か》|音《のん》、|聖《せい》|也《や》、|天《あま》…

  • 『かくて月夜に騒ぎを起こす』耀夜は後悔していない

     それでも|納《なっ》|得《とく》しかねる様子の|真《ま》|理《り》|亜《あ》に対し、それにな、と一息置いてから告げる|耀《かぐ》|夜《や》は、|笑《え》|顔《がお》だった。「本当に|駄《だ》|目《め》だと思うんだったら、|真《ま》|理《り…

  • 『かくて月夜に騒ぎを起こす』救出劇は折返し地点

     |懸《け》|念《ねん》されたセキュリティシステムは、強化された|絡《から》|繰《くり》|師《し》と|璃《り》|音《おん》に|逢《あ》いたい|詩《し》|音《おん》の前では無力だった。あまりにもあっさりと破られたそれに、出番のなかった|聖《せ…

  • 『かくて月夜に騒ぎを起こす』憐れなる施設警備員

    「ふっふっふ、いよいよ私の出番ね!」 |詩《し》|音《おん》の|奪《だっ》|還《かん》成功を告げる|通《つう》|信《しん》から三十分後、にわかに|警《けい》|備《び》員の動きが|慌《あわ》ただしくなったのを見て取った|風《ふう》|薫《か》は…

  • 『かくて月夜に騒ぎを起こす』救出劇は成功した

     |龍《りゅう》|神《じん》|警《けい》|備《び》|会《がい》|社《しゃ》の社長|邸《てい》にて、最終点呼が行われる。 |詩《し》|音《おん》の救出に|出《で》|掛《か》けたメンバーは、総員無事。|誰《だれ》|一《ひと》|人《り》として欠け…

  • 『そして新たな日常へ』

     |龍《りゅう》|神《じん》|警《けい》|備《び》|会《がい》|社《しゃ》に、新入社員が入った。 それ自体は、別に|珍《めずら》しいことではない。社長に拾われ、その|人《ひと》|柄《がら》に|惚《ほ》れ|込《こ》んで|中《ちゅう》|途《と》…

 

初版文章はこちら。(横書きです)