玉石パペットと宝石華

『あなたの旅は、見ていて面白いですし』

 あんなにもらったモルダバイトが、もう残り少なくなって、確かに今回の旅は大変だったんだなと思った。 行手に見えるのは、一軒家《いっけんや》にしては大きな建物。そこに宝石華の観測者がいると、噂《うわさ》を聞いた。あまりに宝石華たちの記録が多く…

『誰も僕を見てくれないんです』

 足元に毛皮の当たる感じがして、見下ろした。銀狐のパペットが、戯《じゃ》れついている。「おお? 人懐《ひとなつ》っこい子やね?」 声を掛《か》けると、こっちこっちと先導してきた。半ば引っ張られるようにしてついていくと、ちょっとした人だかりが…

『何を後悔するって言うのさ?』

 元は宗教国家だったというその街を散策していたら、派手派手しい色彩の行列が、大通りを練《ね》り歩いていた。目に鮮《あざ》やかな黄金色、赤色、青色で、目がチカチカする。 これが噂《うわさ》の、ご本尊様のお渡り行列か。 やがて、白尽くめの大人た…

『一緒に逃げよう』

 列車にて、向かい合わせの席に座ったお兄さんは、とても機嫌《きげん》が良さそうだった。何ごとか書かれた紙を見て頬《ほほ》を緩《ゆる》める様子は、見ている私まで気持ちが良い。「おい。良い加減にしないと、笑われてるぞ」 注意せずにはいられなかっ…

『アンタは、一体……』

 すれ違《ちが》ったのは偶然《ぐうぜん》で、相手に気付いたのは、本当にたまたまだった。パペットの核を覗《のぞ》き見るのは本来あまり褒《ほ》められた行為ではなく、だから私も普段は意識して、気にしないようにしている。とは言うものの、興味と好奇心…

『よっぽどお嬢ちゃんが気になるのかねぇ』

 不意に夜空に火の粉が舞《ま》って、けれど花火にしてはなかなか消えなくて。何事かと気になったものだから、宿屋の窓に額をくっつけた。 あ、また火の粉が打ち上がった。 ちょっとこっちに近付いてきたな? と思っていたら、何かの影が凄《すご》い勢い…

『お姉ちゃん、もう行くの?』

 トコトコと、年端も行かない少年が歩くのに、着いて行く。少年を先導《せんどう》するのは、青い小鳥だ。 少年は、両親と喧嘩《けんか》して、家を飛び出してきたらしい。他の大人には何も言わないことを条件に、私は少年の後ろを着いて行く。私が着いて行…

『結構、濃厚な出会いがありそうよ』

「ふふ、お帰りなさい」 知る人ぞ知る、有名な占い師が居《きょ》を構える館の扉に手を掛けた瞬間、扉は内側から開かれた。いつものこととは言え、かなりビビる。 片手で扉を開けた女性は、もう片方の腕にペンギンの雛《ひな》を抱《だ》いていた。勿論《も…