落ちこぼれ生徒の独白

その後の話

「相変わらず、ここの空気は綺麗だな」 聖域に転移魔法でやってきたリオニス君は、いつものように深呼吸をして、こう言った。 あれからもう十年以上。彼は学校を卒業すると、再び何でも屋ギルドに登録した。以前も二つ名をもらうほどに優秀だったこと、性格…

『想食種』

「……し、白くなったな?」 週末になって聖域にやってきたリオニス君は、僕の真っ白な髪を見て、びっくりした。「うん、ジンさんとお揃い」「お揃い?」「大丈夫だよ。食べちゃダメなものは、ちゃんと教えてもらってるから」 流石、優等生のリオニス君。僕…

想定外の彼

 一つ、世の中には余剰魔力というのが増えていて、それが魔物化の原因。 一つ、ジンさん(白い小動物さん)は、その余剰魔力が主な餌。 一つ、魔物になりかけていても、ジンさんに治療してもらえれば、治る。 一つ、リオニス君も、彼の白銀の竜も、ジンさ…

疑問だらけ

 目が覚めたら、魔物に取り囲まれていた。……いや、魔物、なのかな? 魔紋を持っているけれど、各々の瞳には理性の輝きが見える、気がする。それに本来、魔物は群れないとも習ったのに。 ……魔物に取り囲まれて、それ以上何もされないというのも不思議な…

夢か、現か

 微睡《まどろみ》の中、誰かと誰かが会話しているのをぼんやりと聞いていた。(この子は、我慢強いな。……我慢強すぎて、心配だ)「ジンもそう思うか。全身こんなに腫れているのに……、よくぞ正気を保っていたものだ。治りそうか?」(治してみせるさ。た…

魔人化発作

 授業が全部終わって、寮に戻っても気が休まらない。 近頃は、眠りも浅いなと思っていたんだ。ちょうど今も、ズキズキとした痛みで目が覚めたところ。まだ陽が昇るにも早い、真っ暗闇。 酷く喉が渇いていて、背中は寝汗でベタベタになっていた。ああ、気持…

魔竜の襲来

 ふと、運動場に落ちる影が大きいような気がして、曇った? と空を見上げた。「……ドラゴン? 違う、魔竜⁉︎」 僕の声で、先生含めて場が一気に静まり返る。ほぼ全員が空を見上げ……、次の瞬間、一気にパニックとなった。「おおお落ち着けぇ⁉︎ 校舎…

苦手な授業

 歴史の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。休憩時間を挟めば、次は魔法実技。……僕が一番、苦手な授業だ。 運動着に着替える間も、気分がどんどん下降していく。魔法は好きだったのに、この授業が始まってから、素直に好きだと言えなくなってしまっ…