魔人化から解放された後のこと
流石に数週間、消息不明だった後でギルドに顔を出したら、周り中に仰天された。しかも、左手に仕込まれていた諸々の生体認証システムまで消えていたものだから、既に死亡扱いされていたし、何なら身内での葬式も終わっていたらしい。 不幸中の幸いは、まだ…
魔の島調査依頼の顛末
シルフィアナとの再会
考え事をしていたら、背後に馴染みの気配を感じた。そっと振り返れば、予想に違《たが》わず、魔紋のだいぶ薄れた相方がいた。「……すまなかったな」 事情も知らず、裏切られたと思い込んだ。己も同じ状況になって、暴走したから分かる。魔竜になっても、…
魔の島調査依頼の顛末
語られた背景と希望
そもそも魔力が何か、なんて、普段気にしたこともない。生まれた時からそれは身の内にあり、消費したら火を出したり水を出したり、様々なことができる。何が得意か、については個人差があり、例えば俺は火の操作が得意で、だから火属性の持ち主と言われてき…
魔の島調査依頼の顛末
不思議な小動物
跳《は》ね起きる。激情に身を焼かれる。目に付くモノが敵にしか見えない。 けれど、実際に何かをする前に、気を失ってしまう。 何度、同じサイクルを繰り返しただろう。 気を失うことが、初めてではないと気付いたのは、いつだったか。森の奥に運び込ま…
魔の島調査依頼の顛末
魔の島
結局どうやって魔の島まで行ったのか……その道中、何も起こさなかったのかを含めて、覚《おぼ》えていない。 肝心な事は、俺がようやっと魔の島に辿《たど》り着いた事。 浜辺から睨《にら》む、おどろおどろしい森。周囲は不気味なほどの静けさを湛《た…
魔の島調査依頼の顛末
噂と激情と
正直、噂《うわさ》だけはあった。 高ランク、二つ名持ちの何でも屋ギルド構成員が、次々と姿を消している。姿を消さずとも、調子を崩している。 別に、高ランクだとか有名な奴等《やつら》に限ったことではないと思うけれどな。 害の低い魔物は須《すべ…
魔の島調査依頼の顛末
ギルド長の依頼
「魔の島の調査?」 思わずそのまま復唱してしまう程度には、厄介《やっかい》な依頼。「そう呼ぶ気持ちも解るがな、『聖域』の異変の調査だ」 恐らく、俺と同じくらい……いや、俺よりも深い皺《しわ》が刻まれた、ギルド長の眉間。「一緒でしょう。そりゃ…
魔の島調査依頼の顛末
シロガネの竜騎士
人力ではまず開かないであろう門を潜《くぐ》り抜け、獲物を降ろした。 反対側の扉までの距離が煩《わずら》わしい、が、解体所が狭《せま》くては何の為の解体所なのか分かったものではない。 大きな息を一つ。 扉を潜《くぐ》り抜けるのが、また面倒。…
魔の島調査依頼の顛末