創造主(第二版)

蛇足

 |誰《だれ》かが笑っていて、|誰《だれ》かが泣いていて、|誰《だれ》かが|怒《おこ》っていて、|誰《だれ》かが|嘆《なげ》いていた。 世界は、|壁《かべ》一枚|隔《へだ》てた向こう側に在り、出来の悪い映画のようなソレを、|偶《たま》に|壁…

訣別

 あれ、ここは|何処《どこ》だろう。|璃音《りおん》は、|何処《どこ》に行ったんだろう? |見渡《みわた》す限り、|瓦礫《がれき》の山だ。スクラップになっている機械群に、何となく見覚えがあるような、ないような。「|璃音《りおん》?」 呼んだ…

のぞんだ結末

 |爆発音《ばくはつおん》がして、また|壁《かべ》が|震《ふる》えた。 本当、この|一ヶ月《いっかげつ》は|忙《いそが》しかった。色んな意味で|璃音《りおん》の|所為《せい》だけれど、だからといって|璃音《りおん》に会わない人生なんて|恐《…

ブラックボックス

 そんなこんなを経て、なんとか|素体《そたい》が完成しそうです、わーぱちぱち。 |璃音《りおん》と並べることを考えながら作ったせいか、本来似せるはずだった、若かったときの写真の|僕《ぼく》よりも|可愛《かわい》くなっちゃったけどね! |璃音…

今後を思う

 特に自分自身に能力なんて望んだことがなかったし、材料のこともあるし、特にオプションもなくオーソドックスな造りの|素体《そたい》にしようかと考えていたのだけれど、ふと、前提条件が|間違《まちが》っていたことに気付いたのが、さっき。 この研究…

研究動機

 まあ、こうなることは、予想の|範疇《はんちゅう》内ではあった。あったんだけど、やっぱり、思わず、ため息が出てしまった。「これじゃあ|僕《ぼく》、若返るしかないな。骨格なんて、|璃音《りおん》とどっこいどっこいのしか作れそうにないや」 何の…

転換点

 |曰《いわ》く、|素直《すなお》じゃないのも|大概《たいがい》にしろだとか。|曰《いわ》く、|肝心《かんじん》なときに大人ぶるのは、最低だとか。 結構グサグサと|遠慮《えんりょ》なく|僕《ぼく》の心を|滅多刺《めったざ》しにしてきた|璃音…

偽りの仮面

 |振《ふ》り|返《かえ》るのには、多大な気力を要した。|更《さら》に言葉を|捻《ひね》り|出《だ》すのには、|全身全霊《ぜんしんぜんれい》を|掛《か》けた。「|璃音《りおん》。君は、行かないの?」 |僕《ぼく》の|瑠璃色《るりいろ》の|堕…

日常の崩壊

「……ふうん、|一ヶ月《いっかげつ》ねぇ」 思わず、口から|漏《も》れ|出《で》ていた。確かに、そろそろ|粛正《しゅくせい》される|頃合《ころあ》いかな、とは思っていたけれど。 |僕《ぼく》の元々の研究動機を|璃音《りおん》が満たしてくれた…

追憶の始まり

 この研究を始めた|頃《ころ》は、まさかこんな事態になるとは予測もしていなかったなぁ、と、|爆発音《ばくはつおん》と共に時折|揺《ゆ》れる研究所の中で思う。 |身体《からだ》はもう、|殆《ほとん》ど動かないし、思考も|霧《きり》がかかったよ…