蛇足
誰かが笑っていて、誰かが泣いていて、誰かが怒っていて、誰かが嘆いていた。 世界は壁一枚隔てた向こう側に在り、出来の悪い映画のようなソレを、偶に壁諸共、粉々に壊したくなる衝動があった。 ざざー、ざー。ほら、ノイズが走る。視界が歪む。音が割れ…
創造主(初版)
訣別
あれ、ここは何処だろう。璃音は、何処に行ったんだろう? 見渡す限り、瓦礫の山だ。スクラップになっている機械群に、見覚えがあるような、ないような。「璃音?」 呼んだ自分の声が幼い。なのに、不思議に思わない。 それもそうか、この身体は。僕が、…
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のぞんだ結末
爆発音がして、また壁が震えた。 本当、この一ヶ月は忙しかった。色んな意味で璃音の所為だけれど、かと言って璃音に会わない人生なんて恐ろしすぎて考えたくもないから、仕方ないかな。 璃音がいなければ、僕は未だに研究を続けていて、組織の粛正に遭う…
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ブラックボックス
そんなこんなを経て、なんとか素体が完成しそうです、わーぱちぱち。 璃音と並べることを考えながら作ったせいか、本来似せるはずだった、僕が若かったときの写真の僕よりも可愛くなっちゃったけどね! 璃音がカワイイのが悪い。てか、僕が若い頃から生意…
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今後を思う
特に自分自身に能力なんて望んだことがなかったし、材料のこともあるし、特にオプションもなくオーソドックスな造りの素体にしようかと考えていたのだけれど、ふと、前提条件が間違っていたことに気付いたのが、さっき。 この研究所が続く前提だった。それ…
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研究動機
まあ、こうなることは、予想の範疇内ではあった。あったんだけど、思わずため息が出てしまった。「これじゃあ僕、若返るしかないな。骨格なんて、璃音とどっこいどっこいのしか作れそうにないや」 何の話かというと、材料の話である。搬出しか許されない物…
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転換点
曰く、素直じゃないのも大概にしろだとか。曰く、肝心なときに大人ぶるとか最低だとか。 結構グサグサと僕の心を滅多刺しにしてきた璃音はようやく落ち着きを見せ始めた、と思いきや。「天音にぃがいなくなったら、誰が自分の面倒を見てくれるんだ? これ…
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偽りの仮面
振り返るのには、多大な気力を要した。言葉を捻り出すのには、全身全霊を掛けた。「璃音。君は、行かないの?」 僕の瑠璃色の堕天使は、一瞬振り返って入れ違いに出て行った助手たちの背中を見たけれど、そのまま僕に向き直って首を横に振った。「本当に見…
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日常の崩壊
「……ふうん、一ヶ月ねぇ」 思わず、口から漏れ出ていた。そろそろ粛正される頃合いかな、とは思っていたけれど。 僕の元々の研究動機を璃音が満たしてくれたおかげで、やっと改めて今までの我が身を振り返る余裕ができたんだけれど、まあヤバかった。皆に…
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追憶の始まり
この研究を始めた頃は、まさかこんな事態になろうとは予測もしていなかったなぁ、と、爆発音と共に時折揺れる研究所の中で思う。 身体はもう殆ど動かないし、思考も霧がかかったようにぼんやりとしてきて、だから研究所の崩壊する中でも、こんなに暢気に考…
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