青の箱庭

ダブラフィオーネ・ポクスレティカ

 泊まる宿屋は意識して不定期に変えているのだけれど、今回の宿が大当たりだっただけに、次を探すのが億劫だ。何が良かったかって、私が帰るといつもその場で美味しいお茶を淹れてくれる程度には気配りが効く一方で、決して私の行き先を詮索しない適度な距離…

シウルナキア・ネウリフェリクス

 裏手の庭に今日も水をやり、店に飾る分と、店でお茶にする分の花や葉を摘んだ。行きは水で溢れていたバケツも、帰りは植物でいっぱい。結局、鍛えてもいない女性である私の腕には、食い込むほどに重い。 陽燈石は今日も快調。庭や店を明るく照らしながらも…

ティリエリリカ・リキアルネ

 カランカラン。 音が鳴った。扉に設置した、呼び鈴の音だ。せっかく、いい感じに思考の海に潜っていた意識が、人間らしい反応、と言うか応答のできる域まで、強制的に浮上させられた。「こんにちは。仕事の時間ですよ」 呼び鈴に連動させていた伝信石が映…

サウダリオルネ・ウィリトリアム

 ふわり、ゆらり、窓の向こうに揺らぐ青に誘われた気がした。もう仕事の手も止まってしまったし、いっそのこと、飛び出してしまおうか。 ここ、碧海箱庭ダウルアリナから出て遊泳できる時間は限られるだけに、とても貴重だ。別に法的に規制されてはいないの…

ルルシエラ・リティアルド

 開け放たれた窓から、そよ風が厚いカーテンを揺らしている。 遥か高みに位置するこの蒼天箱庭、スフィリアーデは、常に厳しい日光にさらされている。だから、全てがすぐに色あせていき、目にする色はほとんどが白、もしくは空の青。 赤い色は貴重だ。一部…