18 エピローグ
ぽかぽかと陽《ひ》の当たる奥庭で、日向《ひなた》ぼっこをする子どもたち。一際《ひときわ》立派な桜っぽい大樹は、今年も満開に咲《さ》き誇《ほこ》っていた。 俺は元人間で、他の猫たちや子どもたちみたいに器用に樹に登れないから、根元に座らせても…
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17 三度目の、正直?
トン、トン、と、俺が絡めてしまっている尻尾などものともせず、|桜香《おうこう》は俺の腰をリズム良く叩《たた》いた。腰というか、尻尾の付け根というか。 落ち着かせようとしてくれているのかな、と思ったのは少しの間だけ。なんだろう、下半身がとて…
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16 郷に入って、郷に従う
猫又《ねこまた》たちの世界には、俺の世界とは異なり、第二の性別があった。相手を孕《はら》ませるアルファ、世の中の大多数を占め、雄雌《おすめす》の括《くく》りに縛《しば》られるベータ。そして、定期的に発情期《ヒート》を迎《むか》え、仔を孕《…
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15 夢よりも不思議な、現実
ミューミューと、か細い鳴き声がする。体は冷たくて重くて、多分、芯《しん》の方がまだ寒い。でも、そんな俺を、必死に温めようとしてくれている存在を、確かに感じた。 長く長く、現実|逃避《とうひ》をしていたけれど、結局は|桜香《おうこう》に絆《…
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14 それは、夢だったのか
誰かに呼ばれた気がして、首を傾《かし》げた。「どうした? 佐藤」 同じ講義を取っている友人の懐かしい声が、懐かしい名前を呼んだ。 ……懐かしい? どうして? 長い長い夢でも見ていたかのように、思考がふわふわとして、定まらない。 なんでもな…
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13 世界は、壁の向こう側
|桜香《おうこう》が懸命《けんめい》に、何も反応を返さなくなった俺の世話を焼くのを、壁を何枚も隔《へだ》てたような向こうから認識していた。 彼は俺に口移しで食事を摂《と》らせ、俺を抱きしめながら寝る。寝る時間は猫らしく、昼間。壊れ物を扱う…
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12 閉ざされていく、心
心を閉ざして、理性も仕事を放棄《ほうき》して。そんな俺の反応がおかしいことに、|桜香《おうこう》は直《す》ぐに気付いたようだった。「錦《にしき》?」 名前が呼ばれたから、喘《あえ》ぎながらも目を向けた。向けた先の大きなキジトラの猫は、一瞬…
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11 発情猫は、狂い鳴く
胎内《たいない》に……感じてはいけない所に感じる、|桜香《おうこう》の熱。ふるりと背筋が震《ふる》えたのは、変化の予兆だったのか。 熱い。いや、寒い。体の奥から熱が上がってきて、なのにそれが足りなくて、矛盾した感覚に、更に混乱する。 熱い…
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10 二度目、上書き
痛いだけなら良かった。それだけなら良かったんだ。俺は悲劇《ひげき》の主人公なんだと、自己|陶酔《とうすい》も現実|逃避《とうひ》もできた。耐えれば終わると、信じることだってできた。なのに尻の中には快感を拾うポイントなんてのがあるから、その…
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09 新月、閨の中
桜香《おうこう》は、その言葉通り、俺をグズグズのトロトロにしたいらしい。丁寧《ていねい》に、けれどしつこく、体中を舐《な》め回しては、俺が反応した箇所をいじめる。 何度も精を放った俺はドロドロで、既に息切れしていたところに追い討ちを食らい…
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08 因果応報、自縄自縛
桜香《おうこう》に逆らえないまま爛《ただ》れ切った日々を過ごし、およそ半月。最初の夜こそ人間に化けていた桜香《おうこう》だったけれど、日に日に猫らしさを増して、最近はただの二足歩行の巨大猫に戻っていた。それでも俺は桜香《おうこう》に胤《た…
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07 自覚なく、侵蝕される
目が覚めると部屋の外はうっすらと明るく、夜が明けたことを知った。 身動《みじろ》ぎしようとして、まだ桜香《おうこう》を抱いていたことに気付く。抜くべきモノをそっと抜こうとしたのに、桜香《おうこう》はまだ俺から搾《しぼ》り取りたいらしい。肩…
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